商品の登録作業を自動にしたい、というご相談で、最初に決めたのは「元の資料には手をつけない」ことでした。
整理してから自動化する、という順番は自然に見えます。ただ、整理そのものに終わりが無い場合、いつまでも着手できません。すでに完成しているものから逆に辿ると、この足踏みを避けられます。
この記事では、なぜ整理から入らなかったのか、代わりに何をしたのかを書きます。
前提
通販サイトを運営している会社です。商品を1つ登録するのに、3段階を踏んでいます。
メーカーへ聞き取りをした表があり、そこから商品ごとの企画書を作り、最後にサイトへ登録します。表の形式は、単品・箱・セットで別々です。
登録済みの商品は、およそ1000件あります。
何が問題だったか
どの項目がどこに対応するか。全体を把握している人はいませんでした。
担当の方の記憶で埋まっている部分が多く、7月に1名から2名になった時点で、引き継げないとはっきりしました。新しい方が同じ商品を登録すると、内容が微妙に変わります。
やっかいなのは、間違いに気づけないことです。
どちらの登録が正しいかを判断する基準が、どこにも書かれていません。結果として、後から入った方が「前の人はこう書いていた」を頼りに真似ることになります。真似た内容が正しいかどうかは、誰も確かめられません。
決まりが無いわけではありません。長く運用してきた分、実質的なルールは固まっています。
書かれていないだけです。この違いは大きくて、ゼロから決める必要はなく、外に出すだけで済みます。
企画書から直したくなる。でも終わらない
順当に考えると、まず企画書のフォーマットを整えることになります。実際そう提案しかけました。
やめました。整える対象が1000件近くあり、しかも「正しい形」が決まっていないからです。
正しい形をこれから決めようとすると、関係者の意見が割れます。
仕入れの担当は原価の欄を厚くしたい。販売の担当は売り文句の欄を厚くしたい。どちらも業務としては正しく、決着に時間がかかります。その議論だけで数か月かかると見込みました。
その間、現場の手作業は1件も減りません。相談の出発点は「作業を減らしたい」だったので、これでは目的から遠ざかります。
すでに完成しているものから、逆に辿る
代わりに選んだのは、サイトに登録済みで完成している商品から逆算する方法です。
公開されている約1000件は、少なくとも「これで公開できる」形になっています。この事実だけで、正解として扱う根拠になります。
それを機械が読める形に書き出し、企画書や管理表のどの欄と対応するかの表を作りました。
作り方は単純です。完成品の各項目について、元の資料のどこから来たのかを1件ずつ辿ります。1000件も見れば、対応の規則はかなりはっきり見えてきます。
正解が先にあるので、決める議論が要りません。ここが、この進め方のいちばんの利点です。
規則から外れるものも出てきます。
ある種類の商品だけ、原価の計算方法が違っていました。これは間違いではなく、そういう決まりでした。書かれていなかっただけです。
例外は無理に規則へ寄せず、例外として一覧に残します。数えてみると、例外は全体の1割にも届きませんでした。
元がきれいでなくても、始められる
対応表ができると、企画書の形式が揃っていないことは、それほど困らなくなります。
どの欄がどこに対応するかが分かっていれば、形式が違っても読み取れるからです。結果として、整理そのものを先にやる必要が薄れました。
この方法は、完成品が多いほど精度が上がります。
10件しか無ければ規則は見えません。1000件あれば、例外まで含めて見えます。長く運用してきたことが、そのまま材料になります。
進めるときに気をつけたこと
1000件をすべて人が読むわけではありません。
機械に読ませて対応の候補を出し、人はその候補を確かめます。全部を目で追うと、それだけで数日かかります。
読ませる範囲も、最初から全件にはしません。まず50件で規則が見えるかを試し、見えたら残りに広げます。見えなければ、対象の選び方を変えます。
公開済みのものを正解として扱う、と書きました。ただし、そこに古い間違いが混ざっていることもあります。
見分け方は単純で、規則から外れたものを一覧にしたとき、同じ外れ方が複数あれば例外、1件だけなら間違いの可能性が高い。この基準で仕分けました。
対応表ができたあとであれば、企画書の形式を揃える作業も進めやすくなります。
どの欄が使われていて、どの欄が使われていないかが分かっているからです。使われていない欄を落とすところから始めれば、議論も短く済みます。
順番を変えただけで、同じ整理がずっと軽くなります。
まとめ
整理してから始めよう、と思うと着手が遅れます。動いているものが手元にあるなら、そこから逆に辿るほうが早い。
正解を先に決める議論を飛ばせるので、関係者の合意を待たずに進められます。例外は無理に潰さず、例外のまま書き出せば足ります。
手作業で作っている資料があるなら、完成品が何件たまっているかを数えてみてください。数がたまっている会社ほど、逆算で始められます。
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