入力から作ると、たいてい失敗します。先に決めるのは「何を一意に数えるか」です。
表計算での管理が限界にきたとき、多くの場合は入力画面の話から始まります。使いやすい画面を作れば解決する、という発想です。ところが、数が合わなくなる原因は入力の側にありません。
この記事では、なぜ入力画面から作ると失敗するのか、代わりに何を決めるのかを書きます。
前提
想定しているのは、受注から出荷までを表計算で管理している会社です。注文が増え、スタッフも増えて、このままでは回らないと分かっている段階を前提にします。
業種は問いません。同じ構造は、受注に限らず、案件管理でも在庫管理でも起きます。
何が起きているか
表計算で受注を回している会社では、注文の情報が散っています。
受注の表。請求の表。発送の表。同じ注文がそれぞれに書かれていて、人が転記しています。
すると数が合わなくなります。受注は120件なのに、請求は118件。どちらが正しいのか、突き合わせるまで分かりません。
突き合わせには時間がかかります。しかも、見つかった差の原因が転記漏れなのか、そもそも数え方が違うのかを判断できません。
入力画面を作っても、これは解けません。入り口がきれいになるだけです。その先で3つに分かれる構造は、そのまま残ります。
むしろ、入力が速くなるぶん、ずれる件数は増えます。
先に決めるのは「何をひとつと数えるか」
先に決めるのは、何をひとつと数えるかです。
分納したら1件か2件か。同じお客様が同じ日に2回頼んだら、分けるのか。キャンセルして取り直したものは、元と同じ注文か。
ここが決まらないかぎり、どの画面から見ても数は揃いません。
ある会社では、紙に書き出すところから始めました。
注文を受ける、作る、送る、請求する。この流れに沿って、どこで人が転記しているかを洗い出します。転記が起きている場所が、そのまま数の合わなくなる場所です。
書き出してみると、転記は5か所ありました。そのうち3か所は、同じ情報を別の呼び方で書き写しているだけでした。
数え方を決める作業は、多くの場合、言葉を揃える作業になります。
受注の表では「注文番号」と呼び、請求の表では「伝票番号」と呼んでいる。中身は同じなのに、名前が違うので同じものだと気づけない。こういう状態がよくあります。
名前を1つに決めると、それだけで突き合わせが楽になります。
数え方を決める場では、意見が割れます。
営業の方は「1回の商談で受けたものは1件」と考え、出荷のご担当は「箱が2つに分かれたら2件」と考える。どちらも業務としては正しく、見ている場所が違うだけです。
このとき有効なのは、どちらかに決めることではなく、両方が数えられる形にすることでした。注文という単位と、出荷という単位を分けて持たせます。分けておけば、営業の画面では注文の数を、倉庫の画面では出荷の数を出せます。
議論が長引くときは、片方に寄せようとしていることが多いものです。分けられないかを先に考えると、決まりが早くなります。
出来合いのサービスを、まず検討する
この会社でも、市販のサービスを先に見ています。
見送った理由は、その業界ならではの管理項目が多かったことです。現実的な費用で扱えるものが見つかりませんでした。
裏を返せば、項目が標準的なら市販品で足ります。
判断の分かれ目は、業務のほうを合わせられるかどうかです。市販品に合わせて自社のやり方を変えられるなら、その道が早い。変えられない理由があるなら、作ることになります。
作る前に確かめる価値があります。
入力画面は、最後でいい
数え方が決まれば、あとは自然に決まります。
同じ注文を、関わる方がそれぞれの画面から同じものとして見られる。そこまで来れば、転記は要りません。転記が無くなれば、入力画面は「最初の1回だけ書く場所」になります。
手作業は大半が無くなりました。人を増やさずに注文を受けられます。いまも使われています。
あとから管理する項目が増えることも見込んで、足せる形にしてあります。商売のやり方が変われば、必要な項目も変わるからです。
移行するときの順番
置き換えは、表単位ではなく工程単位で進めます。
このときは、受注を受けるところから先に移しました。ここが起点だからです。起点が固まると、後ろの工程はそこから引くだけになります。
逆に、請求から先に移すと、受注の側がまだ表計算のままなので、結局そこで転記が発生します。順番を間違えると、移行の途中でかえって手間が増えます。
新しい仕組みに移したあとも、しばらくは表計算を並行して残しました。
ただし、いつまで残すかを先に決めます。決めずに残すと、両方に書き続ける運用が定着してしまいます。実際、期限を切らずに残した会社が、半年後も二重に入力していた例を見ています。
商売のやり方が変われば、管理する項目も変わります。
新しい項目を足すたびにプログラムを直す形にすると、そのたびに見積もりと待ち時間が発生します。設定で足せる形にしておくと、その日のうちに反映できます。
最初にすべての項目を洗い出そうとするより、足せる作りにしておくほうが現実的です。
まとめ
表計算をやめるとき、直すべきは入力の速さではありません。同じものが複数の場所に書かれている構造です。
先に決めるのは、何をひとつと数えるか。それが決まれば、どの画面から見ても数が揃う形になります。入力画面はそのあとで構いません。
いまお使いの表計算で、同じ情報が2か所以上に書かれている箇所を探してみてください。そこが置き換えの出発点になります。
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